ムーミンで知られるトーベ・ヤンソン。
わたしはムーミンはあの独特の暗さがこどもごころにはどうも理解できず、スナフキンだけが好きだったぐらいで結局どんな話だったのか記憶がない。
今回書店で装丁のリリしさに魅かれて買ってみたものの、どうしてもムーミンの雑貨のイメージがあって文章も雑貨のような手軽さ、親しみやすさがあるのかなっという先入観で読みはじめた。
第一印象はとても読みやすい。
いちばん好きだったのは『ボートとわたし』という作品。
幼い日にボートを手に入れたヤンソンが島を目指して冒険に出るというお話なのだけどこの作品にヤンソンらしさが出ているように思った。
この作家の本領は「日常に潜むちょっとした冒険」、それはとても独特な個人的な思い入れからはじまるのだが、そこに躊躇なく飛び込んで、誰もが理解できる美や感情を、とても手際よく色鮮やかに切り取ることができる、そんな才能なのではないだろうか?
絵と文を書く人は、大体どちらの作品からも受ける印象というのが似てくるもので、ヤンソンにもその傾向はあるように感じられた。
自伝的映画『TOVE』のなかで“人生は冒険よ。寄り道しなきゃ。”ということば紹介されていたが、彼女についてよく語っていることばだと思う。冒険と寄り道。そこで出会う物語。それが彼女のコアだと思う。
純粋芸術に挫折して、連載をはじめたという『ムーミン』。こどものころに感じた独特の暗さは国民性や時代だけでなく彼女の挫折体験も影響してるのだろう。芸術家の両親のもとに生まれて、世界的をキャラクター生み出し、政治家や文学界の重鎮とも浮名を流したという彼女の人生はさぞかし順風満帆だろうと想像したが、そう簡単に割り切れるものではないらしい。父親との確執も長くあったようで、『ボートとわたし』のなかでも結局父親に冒険を中断させられてしまい、その上思ってもみないことばをかけられるてしまうのだが、そういう意味でも彼女の人生の一部を切り取ったような作品だなという印象が残った。
もう一つ好きな作品は『卒業式』
卒業の日の解放感、若者の未来に向かう高揚感がよく表現されていると思った。あやうく告白されそうになって逃げだす場面は思わずニヤリとしてしまう。万国共通の卒業式あるあるなんだろうな。
“あのころはなにもなくて、それだってたのしくやったよ~”なんて日本の歌の歌詞もあったな。
ヤンソンもいう。“わたしはおかしいと思った。皆がよく「幸せでいるのはとても難しい」と言うのが。”
こちらも国や時代を超えてだれもがたいせつに持ち続ける感情のようだ。
That means forward under no one of the parents
That’s a great perspective!