メッセージ トーベ・ヤンソン自選短篇集 の書評・感想 2022.05.15 ムーミンで知られるトーベ・ヤンソン。わたしはムーミンはあの独特の暗さがこどもごころにはどうも理解できず、スナフキンだけが好きだったぐらいで結局どんな話だったのか記憶がない。今回書店で装丁のリリしさに魅かれて買ってみたものの、どうしてもムーミンの雑貨のイメージがあって文章も雑貨のような
要約すると サマセット・モーム (著) 中村能三(訳) 新潮文庫 の書評・感想 2022.03.06 モームが晩年に自身の人生を振り返ってその時々の思いをまとめあげたもの。彼は人生の中で、何度かいかんともしがたい思いがこころにオリのように溜まってきて、のっぴきならない状態になったようだが、それらを書ききることで溜飲は下がり満足し、次の人生に迎えるということがあったようだ。内容はおもに文学、思想、芝居
女ごころ W・サマセット モーム(著)ちくま文庫 の書評・感想 2022.03.01 モームの作品は翻訳されたものはほとんど読んでいると思う。どの作品も基本最初から最後まで読みやすく、文にツヤがあり話に落ちがある。長めで好きなのは本タイトルと『劇場』あと『サミング・アップ』も好き。新潮の100冊にはいまも『月と6ペンス』だけが残っているのだが(たぶん30年は動いてない)、なん
老人と海 ヘミングウェイ (著) 福田 恆存 (訳) 新潮文庫 の書評・感想 2022.02.18 本作品はいまも新潮文庫の100冊にのこる数冊の海外文学の中の一冊。たぶん30年以上前からずっとシリーズを飾っている。ちょっと前に『ヘミングウェイで学ぶ英文法』という本が売れてると聞いて、まだ文学への憧れ、原文を読むことへの憧れってあるんだなっと思った。翻訳ものは光文社さんにおせわになることも
青い麦 シドニー=ガブリエル コレット(著)光文社古典新訳文庫 の書評・感想 2022.02.13 啄木は、空に心を吸われていて、尾崎豊は盗んだバイクを走らせていて、アン・シャーリーはグリーンゲーブルズでクイーンズカレッジの受験勉強を始めて、M・デュラスはインドシナの植民地で中国人の愛人に抱かれていた。あなたは15歳の時なにをしてましたか?この作品の15歳ヴァンカは幼なじみの恋人フ
クリスマス・ソング アーネスト ベイツ(著)福武文庫 の書評・感想 2022.01.15 大学時代、ゼミで読んだ作品。平明で簡潔、まさに教科書的な良品というところ。短編集で私のお気に入りは表題の『クリスマス・ソング』と後半に出てくる『ロスト・ボール』という作品。ベイツはイギリスでは多作で国民的作家らしいのだけど、日本ではほとんど知られていない。母国でウケるけど他国でウケない、ある
無関心な人びと アルベルト・モラヴィア (著), 大久保昭男 (訳) Kindle の書評・感想 2022.01.15 モラヴィアといえばバブルのころ今はもうなくなった青山ブックセンターによく在庫が並んでいた記憶があって、オシャレ系で意味も分からず小脇に抱えて文学をわかった風を装うみたいな、そんな作家という印象があった。彼の『軽蔑』という作品をゴダールが映画にしたりしてやっぱりちょっとハイセンスな感じ。
愛人 ラマン マルグリット・デュラス(著) 河出文庫 の書評・感想 2022.01.15 とかく性愛部分だけが取りざたされてスキャンダラスに語られることの多いこの作品。ただ許容するにせよ拒絶するにせよ、感情的に揺さぶられているだとしたらそれは作家デュラスの腕がたしかだということだろう。ノーベル賞作家のバルガス=リョサが『若い小説家に
北回帰線 ヘンリーミラー(著) 新潮文庫 の書評・感想 2022.01.15 なにかを書きはじめようとするときいつも思い出すのはミラーのことば。“ぼくは諸君のために歌おうとしている。すこしは調子がはずれるかもしれないが、とにかく歌うつもりだ。諸君が泣きごとを言っているひまにぼくは歌う。諸君のきたならしい死骸の上で踊ってやる。”劣情にまかせて書き散らし、推敲のあ